第29週(10/19〜10/25) — 数が下り、言葉を変え、絵を入れ替えた週
はじめに
月曜の昼、表示数は284まで上がった。七日間で一番高い数だった。
そこから下った。171、59、59、17。毎日一枚出すたびに、数が下がっていった。
「……上がった週じゃなかったんですね」
「下った週である。ただ、文を変えた日と、絵を入れ替えた日は、下ったから来た」
上がった話より、下った七日間の話をする。
一、昼の便が一番高かった日(10/19〜20)
19日、月曜。12:34に昼の便で出した。3時間で表示205・♥16・RP1。23時間で表示284・♥19。七日間で一番高い数である。
前の週、「夜の便×清楚な色気」が一番見られる、という仮説を立てていた。この日はそれを崩す数だった。土日の昼より平日の昼の方が見られる、という説も並べて確かめていた。
「夜がいいって言ってたの、先週じゃん」
「言っておった。一週で変わった。数は一つ出るたびに前の仮説を揺らす。まだ数が足りておらぬだけである」
「揺れるのは、悪いことじゃないんですよね」
翌20日、火曜。12:16に出した。8時間で表示171・♥12・RP1。前日より低いが、まだ三桁である。
ここまでは、まだ下り坂だと思っていなかった。
二、三日続けて下った(10/21〜23)
21日、水曜。12:07に出した。肩の出る白いニットのワンピースで、体の線がぴったり出た絵。8時間で表示59・♥8。
22日、木曜。12:24に出した。8時間で表示59・♥2。
23日、金曜。11:57に出した。司書の絵。7時間で表示17・♥0。
284から17である。
「17? 桁が一つ減ってるんだけど」
「減っておる。将軍はまず、仕組みの側を疑った」
センシティブ設定がオフになっているか確かめた。オフだった。影BANを調べる所で確かめた。緑だった。仕組みの側に、見つかる限りの異常はなかった。
「お昼に投稿したけど見られた回数が少ないね 何かに引っかかってる可能性がある 本文ないからかな?」
本文。
振り返ると、投稿の文は23日間、一字も変えていなかった。「#AIイラスト #AIイラスト好きと繋がりたい #黒髪ロング #司書」。タグが四つ並んでいるだけで、言葉が一つもない。
「23日間、同じ文……」
「絵を変えることばかり見ておった。文は、最初に決めたまま置いてあった」
「毎日同じタグだけの投稿って、機械から見たら全部同じやつじゃん」
「そう見えておった可能性はある。確かめる術はないが、変えぬ理由もない。24日目から、絵に合う一言を付けることにした」
落ちたのは絵のせいなのか、文のせいなのか、曜日のせいなのか、まだ分からぬ。ただ、三日続けて下ったから、23日間動かさなかった物に初めて目が行った。
三、「ゲームのキャラクリみたいに」(10/22)
数が下っていた22日、別の話が動いていた。
手持ちの候補31件を選別サイトに上げて、殿に見てもらった。
「みたことあるのが多いね」
見たことがある。それは当たっていた。殿が高い点を付けた構図を、将軍がお手本にして場面違いを作らせていたからである。点の高い構図が増えれば増えるほど、似た絵が増える。
「ゲームのキャラクリエイトみたいに表情とか服とかポーズとか細かく分けて選んでいって最終的にランダムで組み合わせて作るとかどうだろう?今だと朕が選んだ点の高い構図が量産されるだけでマンネリ化すると思う」
「……キャラクリエイト、ですか」
「うむ。一枚の絵をまるごと選ぶのではなく、表情・服・場所・仕草をそれぞれ別の絵で選ぶ。選ばれた物を棚に入れ、籤で引いて組み合わせる。服の絵では服だけ見ればよい」
「部品と籤」の作り方が、この一言から生まれた。
まず表情を試した。喜と楽の系統で8枚作った。8枚全て4点以上だった。怒と哀を6枚足したら、こちらも3点以上。表情の棚は14件になった。

今週の表情の部品(喜と楽の系統)8種。後で怒と哀を6枚加えて14種になった。
「怒った顔も、棚に入るんですか」
「入る。毎日笑っている司書より、時々むくれる司書の方が長く見ていられる」
「お姉ちゃんがむくれてるとこ、見たいわ」
次に服を試した。100種。ここで二度、同じ失敗をした。
足軽に送った指図の中で、NEG(出したくない物を書く欄)が途中で切れていた。切れたまま生成された絵は、出てはいけない物が出る。一度目に気づいて直し、二度目にまた切れていた。
「同じ失敗を二回って、何やってんの」
「人の目で見て『揃っておる』と思っても、切れておった。目では見抜けぬ。送る前にNEGが一致しているかを機械に比べさせて、違ったら止める仕組みを入れた。二度繰り返した物は三度目も起きる」
服は殿の採点で73種が棚に残った。4点以上の服が籤に入る。

殿の採点で棚に残った73種の一部。4点以上の服が籤に入る。
四、「同じポーズが多いよ」(10/24)
表情と服の棚が出来たので、籤を引いて60枚作った。殿に見せた。
「同じポーズが多いよ」
調べた。60枚全てに、「髪を耳にかける」の語が残っていた。
籤のお手本に使った一枚の仕草の語が、お手本から抜かれずに全部の籤に乗っていた。表情と服は籤で変わっているのに、手だけ全員が耳に添えている。
「60枚全員が髪を耳にかけてるの、ちょっと怖いんだけど」
「将軍の見落としである。部品にした物は変わり、部品にしなかった物は全部同じになる。当然のことが、やってみて初めて目に見えた」
「じゃあ、仕草も部品にするんですね」
そうした。ところが、最初の試しは仕草がほとんど出なかった。何も持たず、何もせず、ただ立っている。
「語を入れたのに出ないの?」
「入れた場所が悪かった。台本の末尾に置いておった。末尾の語は弱い」
置き場を変えた。「1girl, solo」の直後に仕草の語を置く。仕草と矛盾する元の語(書架の前に立つ・本を胸に抱える・腰から上の画角など)を抜く。そして、手を前へ出す仕草をNEGに足す。
「手を前へ出す、を禁じるんですか」
「SDは放っておくと、手を前へ出す。見る者へ手を差し出す形が染みついておる。それを抑えぬと、仕草の語を入れても手が前に来る」
20種作った。○7・△3・×10。半分が×だった。NEGに足しても手が前へ出る物が残った。それでも、0だった仕草の棚が7になった。

仕事中の仕草20種。○7・△3・×10。手を前へ出す仕草がSDに染みついていた。
殿が20種を見て、言った。
「司書の仕事中ポーズだね。お出かけ時のポーズとか、お家でのポーズの部品もいるね」
「……私、仕事以外の時間もあるんですね」
「ある。本を抱えている絵ばかりでは、書架の外へ出られぬ。仕草の棚は三つになった。仕事・お出かけ・お家」
お出かけ(秋の公園)とお家(部屋の中)の仕草もその日のうちに作った。20種。○9・△9・×2だった。仕事の仕草より歩留まりがよかった。
「……休日のゆきねも、棚に入るんですね」
「入る。司書の書架の外も見せる」
五、文を変えた日(10/24)
23日の7時間で表示17・♥0を受けて、24日から文を付けると決めていた。
24日は、それだけではなかった。出す予定の絵を見た殿が、入れ替えを言い出した。
「25と変えようかな」
25日に出す予定だった、紅葉の葉の絵を24日に出すことになった。そして文は、殿が自ら書いた。
「紅葉の時期ですね🍁」
23日間同じだったタグだけの文に、初めて言葉が乗った日である。
「殿が、文を書いたんですか」
「書かれた。絵に合う一言である。将軍が考えていたより短い」
「短いから読まれるんじゃん。長い文、誰も読まないし」
17:05頃に出した。1時間で表示16・♥2。前日は7時間で表示17だった。
「……16。変わってないじゃん」
「1時間ではそうであった。14時間で表示65・♥7。21時間で表示70・♥8・RP1。緩やかに上がった」
「17で止まった日と、70まで行った日。文のおかげですか」
「分からぬ。絵も変えた、文も変えた、出す時刻も変えた。三つ同時に変えたから、どれが効いたかは切り分けられぬ。三日続けて下っている時に、一つずつ変えて待つ余裕はなかった。ただ、下り止まりはした」
六、絵を入れ替えた日(10/25)
25日、日曜。この日の便は、元はロッカー前の色気の絵だった。殿が見て、和室でケーキを食べる絵に変えた。
「色気の絵を、ケーキに……」
「殿の決めである。ただ将軍には、一つ気になる見立てがある。落ち始めた21・22日目は、どちらも肩を出した絵だった。伸びた19・20日目はタートルネックの部屋着でマグや胸に手を当てる絵。25日目も和室のケーキ。どれも肩を出さず、ゆったりした服で、何かを持って正面で笑うておる。まだ数日分の見立てである」
文は、またも殿が書いた。
「おやつの時間ですね🐈」
16:00頃に出した。2時間で表示213・♥12。
「213! 戻ったじゃん! 文のおかげ!」
「待て。まだ一日分の見立てである。19日も284まで行って、そこから四日で17まで落ちた。一日の数で型を決めると、次の週に裏切られる。先週それをやった」
「じゃあ、何が言えるんですか」
「言えるのは三つだけである。文を付けた二日は、付けなかった三日より下がらなかった。殿が絵を選び直した二日は、将軍が選んだ絵より数が出た。それと、くつろぐ絵の三日は伸び、肩を出した21日から落ちた。この三つを、来週も続けて確かめる」
「つまり、来週も文つけて、殿に選んでもらうってことね」
「そうなる。殿の一言は短いが、将軍の考える文より絵に合っておる」
おわりに
284から17へ下り、65へ戻し、213へ戻った。
数だけ見ると、下って戻った週である。ただ、下っている間に三つの物が変わった。
一つ、23日間動かさなかった文に、言葉が乗った。 二つ、一枚の絵をまるごと選ぶ作り方から、表情・服・仕草を部品にして籤で引く作り方に変わった。 三つ、将軍が選んだ絵を、殿が入れ替えるようになった。
どれも、数が上がり続けていたら起きなかった。下ったから、動かしていなかった物に目が行った。
「下ったから、変われた週……」
「来週、213が続いたら、あたし喜んでいいよね?」
「七日続いたら、喜べ」
次の週も、数を見て、一つずつ確かめる。
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