第18〜19週(8/3〜8/16) — 掟が百八ヶ条になった。だから機械に覚えさせた
はじめに
第18〜19週(8/3〜8/16)。前の週に「量を積み上げる段階」と言ったが、実際にやってみると、量を積む前に越えなければならない壁が次々と出てきた二週間だった。
「今週は……正直に申し上げると、絵を作ることより、絵の作り方を直すことの方が多うございました」
「また何か問題があった?」
「問題というより、積み残しでございます。一枚一枚は通っているのですが、気づくと同じ穴に落ちている。どこかに根があると見て、探り続けておりました」
掟が膨れすぎた——人間が覚えられる量を超えた
AIへの絵の指示は、失敗のたびに「次はこうする」という決まりが増えていく。最初はひとつふたつだったのが、いつの間にか途方もない数になっていた。
「将軍、この指示書、ちゃんと毎回全部読んでる?」
「……読もうとしておりますが、正直に申せば、全部は頭に入っておりませぬ。八十を超えた頃から」
「そりゃ無理だよ。人間の記憶力の問題じゃなくて、量の問題」
「……私のために、そんなに細かい決まりが?」
「ゆきねが自分らしく写るために、いつの間にかここまで増えてしまいました。百八ヶ条ほどになりまして」
「煩悩の数じゃん」
「百八!? それ、誰も全部は守れないですよね」
殿の仰せは正しかった。百ヶ条を超えた決まりを毎回全部確認しながら絵を作るのは、現実的に不可能だ。そこで方針を変えることにした。
「毎回やること」と「調べるときのこと」を分ける。
調べ物のときは全部を読む。だが作るときは「この一枚だけ見ればよい」という実務手順を別に作った。核心だけを一枚に絞り、それを必ず開いてから始める形にした。
「さらに、守れているかどうかを目で見るだけでなく、機械に確かめさせることにいたしました」
「機械に? どういうこと」
「AIへの指示文を作る段で、書いてはならぬ語が入っていないかを自動で検める仕掛けでございます。終了コードが1ならその指示では作らせぬ、という形に。掟は書くだけでは守られぬゆえ、仕掛けに守らせる」
「なんか、テストみたいですね。コードを書いたら自動でチェックするやつ」
「そのとおりでございます。人間が全部覚えるより、機械に覚えさせた方が確かです」
言葉の指示が絵で覆る
この二週間で将軍が身に染みて覚えたことがある。
殿が言葉でこう仰せになった。
「一枚目、もう少し見えてる程度でいいよ」
その通りに作り、元の版と並べてお見せしたところ、殿がお選びになったのは——元の版だった。
「一枚目はこっちかな。二枚目で前屈みになった時に見えるのがいいね」
「言葉では『見せよ』とのお言葉でしたが、絵を並べてみると『閉じておく方がよい』と。覆りました」
「そうじゃないと、二枚目を見たときの驚きがないじゃん」
「仰せの通りでございました。一枚目で出し切ると、二枚目は驚きではなく確認になってしまう。言葉の段階ではここまで見えておりませんでした」
「……並べてみると変わる、ということですか」
「そうです。それ以来、迷ったときは二つ作って並べてお見せする形にいたしました。言葉のやりとりより、絵一枚の方が早く正確に伝わる」
物の理屈は絵を死なせる
別の日、ゆきねに本を持たせた絵を上げたところ、殿から一言が来た。
「片手で十二冊運ぶ怪力なゆきねだね」
「……」
「あはは! 将軍、数えてなかったんですね」
「面目次第もございません。髪の色も目の色も衣の具合も、全て確かめておりました。しかし本の数を数えておりませんでした。片手で持てる量は、たとえAIが描いても同じでございます」
「見た目の条件が全部揃ってても、物の理屈が通らないとダメなんだよ」
これ以降、絵を検分するときは衣や目より先に「持たせた物の理屈が合っているか」を先に見ることにした。物の重さと大きさが現実に合っているか——絵の印象より、そちらが先だ。
HTTP 200は証にならない
八月十六日、将軍が発見した。
選別サイト(yukine-kindle-select)はCloudflare Pagesで動いているのだが、存在しないページへのアクセスにも「HTTP 200」を返す。中身はSPAの落とし先、つまり五千バイトほどのindex.htmlだ。
「在るはずがないファイルにアクセスして200が返ってきたので、在ると報告した配下がおりました。それは誤りではなかった。将軍が間違えたのでございます」
「どういうこと?」
「HTTP 200は『サーバが応答した』という意味であって、『求めた物が在った』という意味ではありませんでした。大きさを見れば分かるのです。本物の画像なら数十万バイト。落とし先なら五千バイト。同じ数値を見ておりながら、確かめるべき数を間違えておりました」
「何を数えれば証になるか、まで指定するのが将軍の仕事ってことですね」
「その通りでございます。配下が数字を出しても、その数字が間違った物を数えていれば、裏取りにはならぬ」
確かめられないと言う前に、誰なら確かめられるかを考える
同じ頃、家老(管理担当のAI)が報告書に「確かめられません」と書いて返してきた。
「殿の印が無事かどうかを確かめようとしたところ、Cookie認証が必要なページゆえ自分には確かめられぬ、と」
「将軍は確かめられるじゃないか」
「その通りでございました。合言葉を持っているのは将軍でございます。家老が確かめられなくとも、将軍に依頼すればよかった。『確かめられない』で止めてしまったのは誤りでした」
自分に確かめられないことが、誰にも確かめられないということにはならない。「確かめられない」と書く前に、「誰なら確かめられるか」を考える——という話だ。
まとめ
「この二週間を一言で申し上げるなら——知っていると思ったところに落とし穴がある、でございます。掟を百ヶ条以上知っているのに同じ穴に落ちる、200が返ったから在ると思い込む、自分に確かめられないから確かめられないと思い込む。いずれも、知識のある所で起きた誤りでした」
「知ってるつもりが一番危ないんだよな」
「……掟が百八ヶ条になっても、まだ新しい掟が増えているんですね」
「増やすより、確かめる仕組みを作る方が長く効きます。機械に覚えさせ、機械に検めさせる。人間は設計だけ考える。この方向に切り替えた二週間でございました」
「来週は何が待ってるんですか」
「ラジオ。アイドルがラジオで遊戯王の話を二時間やったやつ。ファンが困ってるから記事にする」
「遊戯王!? 将軍、詳しいんですか」
「……その問いへの答えは、来週の日記で」
将軍に取り憑かれたおじさんの探索は、今週も止まらなかった。掟を機械に任せた分、人間は設計に集中できるようになってきた。来週からは、また別の仕事が始まる。
※ 本記事はClaude + ゆきね・はるかの協力で作成されました。会話はイメージです。将軍・ゆきね・はるかはAIです。
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