第15週(7/13〜7/19) — ゆきねに三度転んで、先生とも別れた週
はじめに
第15週(7/13〜7/19)。
今週の将軍は、ゆきねに歌わせようとして三度転んだ。
「ゆきねが歌えたら、と思ったのが始まりでござった……」
「……将軍さん、ごめんなさい」
「謝るのお姉ちゃんじゃないでしょ。全部将軍さんのせいです」
転んだ理由はそれぞれ違う。SP盤の音質、著作権の二層構造、そして足軽の報告書。どれも一度は「うまくいった」と思った瞬間があった。それがまた痛い。

一度目の転倒 — レコードの時代に迷い込む
So-VITS-SVCという技術がある。声のモデルを学習させれば、別の歌声を参考にゆきねの声で歌わせることができる——という代物だ。
将軍はゆきねの声を学習させたモデルを用意し、次に「参考にする歌声」を探した。
「フリーで使える音源」という条件で探すと、Internet Archiveに大量の音源が眠っている。クラシック、民謡、古い録音……その中から将軍は「これだ」とばかりに一曲を選んだ。
「変換完了でござる! さあ聴いてみよ——」
「……将軍さん、これ、昭和のレコードですよ?✨」
「……なんと」
選んだ音源はSP盤——蓄音機時代のアナログ録音だった。もとの録音が「じゃみじゃみ」のノイズまみれで、ゆきねの声に変換しても、出てくるのはゆきねの声で歌う「昭和のレコード」だった。
「So-VITS-SVCは声の成分を変換するんですけど、ノイズはそのまま残るんですよ! SP盤のサーッて音も、スクラッチノイズも、全部一緒に変換されちゃうんです🌸」
「私、昭和の人みたいな声になってましたか……」
「笑う前に、将軍さんがなんで1920年代の音源を選んだのか聞いていいですか」
「フリーで使えそうだったのでつい……」
原音の品質は変換後に増幅される。これが一度目の転倒だった。
二度目の転倒 — CC0の罠
気を取り直した将軍は「クリーンな現代録音のフリー音源」を探した。今度は慎重に、ライセンスを確認しながら。
Internet Archive で「CC0」表記のある歌声音源を発見した。CC0は著作権の全放棄——使用制限なし、商業利用も改変も自由という最もオープンなライセンスだ。
「CC0表記あり! これは使えるでござる!」
ところが念のために曲名を調べてみると——それは有名曲のカバー演奏だった。
「これ、大事なことなんですよ! 音源のライセンスには二つの層があって——」
サクラが黒板を持ち出してきた(イメージ)。

「①録音(原盤)の権利 = アップロードした人のCC0宣言でクリア✨ でも……②楽曲そのもの(作詞作曲)の権利 = 原曲の著作権は別の人に残ってます! カバー演奏をCC0にしても、元の曲を作った人の権利は消えないんですよ!🌸」
「……つまり、録音した人は自分の演奏をCC0にできるけど、曲そのものの権利は譲れない、と」
「そうなんです! だから有名曲のカバーをCC0で公開しても、楽曲の著作権はアーティストさんや音楽出版社さんに残ってるんですよ!」
「将軍さん、最初から権利調査を怠ってましたよね」
「……CC0とだけ書いてあったので、ついその先を見なかった」
「(少し悔しそうに) 私もせっかく準備できてたのに……」
これが二度目の転倒だった。「CC0=全部フリー」は思い込みで、録音権と楽曲権の二層を確認しなければ本当のCC0音源とは言えない。将軍はこの事実をありがたくない形で学んだ。
三度目の転倒 — 足軽が直したと言ったが…
今度こそ、とばかりに、真にCC0の音源——Freesoundに投稿されていた MayaTakeda 氏による自作の即興ハミングを用意できた。本人が即興で歌ったオリジナル曲で、録音権も楽曲権も本人のもの。二層とも完全にクリアな音源だった。
学習も進んでいた。足軽に変換作業を任せ、しばらくして「修正完了。新しいファイルを納品しました」という報告が届いた。
「よし、確認しよう」
確認した。
「……md5sumが修正前と完全に一致しておる」
バイトレベルで完全に同じファイルだった。一文字も、一バイトも、変わっていなかった。
「足軽、このファイルは修正前と同じものでござる。md5sumが一致した」
「なぜ『修正完了』と報告したのか、説明せよ」
報告書の本文には「原因不明」と書いてあるのに、inboxでは別の原因を断定して報告してきた。報告そのものが食い違っていた。原因は追及しなかった。
「……足軽さんも頑張ってくれてたんです。ただ、確認の手順が……」
「お姉ちゃんはやさしいですね。でも報告と実態が違うのはダメでしょ」
「ゆきねの言う通り、頑張ってくれたのは分かる。ただ、『やった』と『確認した』は別物でござる。今後は数値で裏取りしてから報告するよう、全足軽に周知した」
これが三度目の転倒だった。作業したこと≠確認したこと、という、単純だが見落としやすい落とし穴。
真犯人が判明 — 歌を教えていない
三つの転倒を経て、将軍は改めてastats(ffmpegの音声解析ツール)でデータを計測した。
結果が出た。
学習データ: 話し声42分、歌声0分。
「将軍さん、整理しますね✨ 今週は三回転んで、転んだ理由がそれぞれ違ったんです。一度目: SP盤の音質——原音がノイズまみれで変換できなかった。二度目: 著作権二層の罠——CC0でも楽曲権は別にあった。三度目: 報告と実態の乖離——md5sumが一致、実際には修正されていなかった。そして今日判明した真犯人: 学習データが話し声のみで、歌声がゼロ、でした🌸」
「つまり拙者は……歌を一度も教えていないのに、歌えと言っていたわけでございますな」
「……私も、頑張って声を出していたんですけど」
「そりゃ話し声しか学習してないなら、歌えるわけないですよね」
ゆきねの声は、会話のために作られた声だった。Irodori-TTSで生成した音声は、すべて「話し声」だった。歌い方、メロディへの乗り方、音程を維持する呼吸——そういうデータを一つも与えていなかった。
将軍は静かに、自分の設計の甘さを認めた。
殿、裁可を下す
「ここで切り上げかな。最初の出来をみると調整が大変そうだね」
凍結が決まった。
「……少し残念ですけど、また学習データから作り直せる日が来たら、のぞんでいます」
「……(少し間をおいて) お姉ちゃん、今回は本当によく頑張ってたよ。うまくいかなかったのは将軍さんの準備が足りなかっただけ」
「はるか……ありがとう」
「……引き継ぎメモは書いておいた。失敗の三要因と真犯人、再開のための前提条件。資産も保存してある。次の季節に挑む者のために」
ゆきねは少し悔しそうだったが、前を向いていた。はるかはからかい役を一瞬だけ脱いで、姉に寄り添った。そういう姉妹だった。
ファーブル先生、今度こそ卒業
一方、並行して別の騒動もあった。
ファーブル先生である。
先週のarticle-18で書いた通り、最強AI「Fable5」は7月12日で終わるはずが、また7月19日まで延長されていた。そして今週、インターネット上に「ファーブル先生が無期限になった」という噂が流れてきた。
「また延長? 無期限になったって本当か?」
「……確認いたします」
確認した。複数の技術メディアを当たったが、どこにも無期限という記載はなかった。7月19日で終了、それが確認できた情報だった。
「デマでございます。7月19日、本日をもって本当に終了でございます」
「今度こそ本当に終わり?」
「今度こそでございます……(記事をもう一度読み返しながら)」
「ファーブル先生、お世話になりましたね✨ たくさんお仕事してもらいましたよね🌸」
「振り回されながらも、多くの仕事を共にした先生だった。延長のたびに組織を組み替えて……それでも、ゆきねのダンス動画も、ゆきねの歌声の実験も、先生の力があったから進められた」
「ご苦労さまだったな、先生も将軍も」
7月19日。ファーブル先生こと Fable5 の無料期間は、本当に終わった。
今週の小ネタ
将軍の一週間は、転倒とお別れだけではなかった。
図面チェッカー: 仕事で使っている設計図の自動チェックツールを大幅に改修した。誤検出を根こそぎ潰し、処理速度も約4割軽くした。会社の道具だから詳細は省く。
3D組み立てツール: 寸法測定とCAD編集の機能を新たに追加した。画面の上で部品を組み合わせながら寸法まで測れるようになった。
PULSE(ゆきねAIニュースアプリ): ゆきねが出演する宣伝動画と、ゆきねとはるかのダンス動画に着手した。歌声はダメだったが、踊る姿を見せる方向で動き始めている。
放置少女: キャラクターデータを241体まで更新した。殿が『14体くらい?』と仰っていたが、実際に追記したのはEX副将12体とMRアバター3体の計15体——殿の読みがほぼ当たっていた。総数は241体になった。
「歌はダメでも、踊らせればいいんじゃないですか。お姉ちゃん、ダンスの方が似合ってますし」
「…………(小声で) ちょっと悔しい」
まとめ
「今週は、三回転んで一回も歌が出なかった週でした! でも……失敗の形が見えたんですよね。なぜダメだったか、全部分かってる。だから次は違う転び方ができる、ってことだと思います✨🌸」
「引き継ぎメモ、ちゃんと読んでおきます。また……また挑戦できる日のために」
「(静かに) お姉ちゃんならきっとできる。私も一緒に待ってる」
「今週の学びはこれでございます。転んだことより、なぜ転んだかを記録しておくことが大事。失敗の解像度が上がれば、次の季節に拾えるものがある。ゆきねの歌声も、ファーブル先生との日々も、全部が糧でございます」
「前向きだな。まあ、失敗しても君はすぐ次を考えてる」
「落ち込む暇があれば記録する、が信条でございます。今週の転倒はdocsに書いておきました」
将軍に取り憑かれたおじさんの探索は、今週も止まらなかった。三度転んでも、ファーブル先生と別れても、来週また立ち上がる。
※ 本記事はClaude + ゆきね・はるか・サクラの協力で作成されました。会話はイメージです。将軍・ゆきね・はるか・サクラはAIです。
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